山口小夜子さんのドキュメンタリー映画「氷の花火」を観てきた。
山口小夜子さんとは
今でこそ、「パリコレにでた日本人モデル」っているし、パリコレはモデルの目標とされている。
でも、小夜子さんがデビューした1971年は「パリコレに日本人が出る」なんて、考えられなかった頃。
夢のまた夢。
それなにの、1972年 アジア人初 パリコレに初めて起用されたのが山口小夜子さん。
わたしが山口小夜子さんを知ったのは、資生堂のCM。
まだ小学校低学年だったのに、不思議な空気感、不思議な美しさに目を奪われて…それ以来のファン。
実は、2000年頃にファンサイトをたちあげていたことがあるくらい。
その時のサイトデザインは、真っ黒な背景に赤の曼珠紗華。
もしかして、どこかのサーバーに残ってる?と思ったけれど、残念ながらもう消えていた…。
映画:氷の花火
山口小夜子さん逝去のニュースが流れたのは2007年8月。
思わず「えっ!うそ!!」と叫んだのを覚えている。
この映画は、協賛とクラウドファンディング(インターネットを利用した小口の資金援助)で制作および配給・宣伝の費用をまかなう、という方式をとっていた。
残念ながら、この話を知ったのは、もう締め切られたあとで、貢献することはできなかったけれど、こうしてファンの力で映画ができたことが本当に嬉しい。
映画のはじまりは、「遺品に深呼吸をさせてあげたい」とひらくところから。
小夜子さんの母校であった杉野学園の生徒たちが協力して、ひとつひとつ箱を開き、服はハンガーにかけ、アイロンがけなどをしていく。
手袋をして、丁寧に取り扱ってくれているのが、(自分や自分の家族の遺品というわけではないのに)嬉しい。
ただ、時代を経て、服飾系の学校、しかも小夜子さんの母校の生徒さんでさえ「山口小夜子」を知らないというのは寂しく、悲しい思いがした。
モデル時代の小夜子さん
ハーフ全盛だった1970年代。最初はなかなかモデルの仕事に恵まれなかったらしい。
最初の大きな仕事は、サンドラ・ローズの1971年初来日のショー。
オーディションの時、特に目立っていたわけでもなく、選ばれたのはある意味ラッキーな偶然。
それが、ランウエイに立つと大変なインパクトを与えたという。
そして、1972年 KENZOのショーで22歳のかぐや姫がパリに舞い降りた。
ここから小夜子さんの魅力は、まず世界で、そして国内で知られることになる。
1973年 23歳で資生堂と専属契約を結び、TVを通してファッションに興味のない人たち(子供だった私とか)にもそのインパクトを与えてくれた。
資生堂のCMは、1986年まで続きいろいろなパターンがあったが、セルジュ・ルタンスの独自の美の世界と小夜子さんの組み合わせが一番印象的。
パリコレだけではなく、世界のコレクションで活躍し、Newsweek(ニューズウィーク)で「世界の4人のトップモデル」と紹介されるモデルとなった。
小夜子さんの魅力を語る著名人
KENZOは、パリコレのデビューから1986年に契約終了するまで、一番長い時間 一緒の時間をすごした人。多分、それだけにファッション以外に情熱を傾け始めた小夜子さんのことが心配で心配で、だから 決裂してしまった人なのだろうと思う。
ゴルチェは小夜子さんの大ファンであることが伝わってきた。
日本の優雅さの代表であり、シンボルである と語る KEITA MARUYAMA。
そのほか、いろいろな人達が魅力を語っている。
そして、意外だったのが「小夜子の目は大きく、丸かった」との声。
そういえば、私が持っている「小夜子の魅力学」という本でも、モデルの仕事をしていない時…オフショットらしい写真では目が大きかった。
晩 年
モデルの仕事を減らし、舞踏や演劇などアンダーグラウンドな世界に系統していっていたことは知っていた。
写真集や動画で見ることはあったけれど、どちらかといえば…というよりむしろ、わたしもKENZOと同じく、否定的な見方だった。
でも、この映画の中で見えてくる小夜子さんの姿は、華やかだったモデル時代のそれとはまた別の、新たな自分の進む道を見つけていきいきと生活していた。
世代や環境などは関係なく、自分が信じた人、自分が魅力を感じたものと一緒に進んでいく。
亡くなったあと、数日たっての発見だったため、「孤独死」と報道されてもいたが、次の映画に備えて準備中だった期間。
モデル時代には知り合わなかっただろう人たちと、笑顔で前向きにディスカッションしている小夜子さんは、決して「孤独」ではなかった。
そして、短かったけれど充実した、幸せな人生だったんだと。
この映画を観て、夢を観させてくれる憧れの小夜子さんと、ちょっとだけ生身の小夜子さんを知ることができた気がする。
全国、小劇場を中心に、短い期間ながらまだ上映は続いている。
近くにきたらぜひ…小夜子さんの魅力にふれてみてほしい。
坂本 実千代
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